「歴史を変えるコーチングシリーズ」の第六弾の主人公として、戦国時代に最強武将と呼ばれた武田信玄亡き後、その家督を継いだ武田四朗勝頼を取り上げた。
 良く知られているように、信玄は甲府から西へ向かう途中で突然亡くなった。
 後継者とされた四朗勝頼は、後年長篠の戦で織田信長・徳川家康連合軍に完璧なまでに敗退した。
 それから十年間、勝頼は信長らの戦国武将に囲まれ、家臣団の派閥抗争に翻弄され、それでも家を立て直そうと懸命であったが、成果は得られず家族と共に天目山にて自決し武田家は滅亡した。

 今回のコーチングは勝頼の弟と現代のコーチが一緒になって行うと想定してみた。
 彼の弟に仁科盛信という若者が居た。
 彼の心に現代のコーチ東城が憑依あるいは乗り移ったとしよう。
 盛信の心の中で盛信と東城が会話し、二人で勝頼を助けるべく家臣らと会話をする。
 しかし、勝頼を妨げる壁は余りにも厚く、盛信と東城の努力は無駄に終わり、歴史は変えられなかった。

 信玄から勝頼への権限移譲プロセスで起こる事は、現代の同族企業に見られる後継者問題に類似するように思う。
 スムースな後継プロセスには何が必要か、後継に関わる二人の人物と周りの重臣あるいは役員、そして親族それぞれに必要な事は何か、如何なる準備が必須なのか。
 それらを怠った信玄と勝頼、重臣と親族。
 彼らの環境を形成した信長や家康ら戦国時代は、現代のビジネス社会である。
 同様に生死をかけて戦う環境である。

 果たして勝頼が愚将であり後継領主として相応しくなかったのか。
 各種資料を検討すると、課題は勝頼にもあったが、むしろ信玄に多くの問題点があったことが見えてくる。
 後継者が勝頼であっても別人であっても、果たして武田家継承は可能だったのか疑問に思わざるを得ない。

 コーチングのキーワードと概要を目次と本文に鍵括弧【 】付きで示したので、詳細はコーチング関連書籍を読んで頂きたいと思う。
(まえがきより)

目次
登場人物
第一章 武田義信反逆事件
・武田義信幽閉  【コミュニケーション・インフラ】
・家具屋父娘騒動
・信虎追放事件
・信玄との対話  【自己基盤の強化】
・諏訪家滅亡
第二章 最強の戦国武将
・武田家臣団
・領土拡張の戦い  【チームビルディング】【ヴィジョンを浸透】【傾聴とオートクライン】
・五郎とコーチ東城  【味方を増やす】
・信玄と勝頼  【フィードバック】
第三章 武田信玄逝去
・信玄の死  【分析力】【感情のマネジメント】
・高遠城にて
・勝頼の治世  【オートクライン】
・軋轢
第四章 派閥争いの狭間で
・宿老と出頭衆
・リーダーシップ  【ダイバーシティ】【インクルージョン】
・長篠の戦い  【アサーティブネス】
・北条夫人
第五章 武田家滅亡へ
・謙信死去
・新府城建設
・躑躅ヶ崎にて  【コーチングの限界】
・滅亡への道  【視点を変える】

著者プロフィール
神戸 博(かんべ・ひろし)
1949年横浜市に生まれる。同志社大学工学部卒。
NEC日本電気入社、^25^年間に亘り無線通信システムの海外ビジネスに従事。その後日本エリクソン(現エリクソン・ジャパン)に転職、^14^年間勤務。在職中にコーチングを学び始め、(一財)生涯学習開発財団の認定コーチ資格を取得、社内コーチを始める。退職後の2009年、個人事業として「コーチHK」を起業。企業向けコーチング及び研修活動を実施中。一方、戦国及び江戸時代には若い頃より深い興味を持ち、多くの歴史小説を読破。2012年、名古屋市内に転居、執筆活動を始める。