リーダーシップについては咋今、多くの書籍が出版され、企業では研修やセミナーが行われています。
しかし、その内容についてどうもしっくりこないと思っている方は少なくないだろうと思います。
人前に出るのが苦手な人や、メンバーを強い力で引っ張って行くことを期待されても、自分には似合わず困る人が居ると思います。
五十年以上も前に、一般に知られるリーダーシップとは異なる、サーバント・リーダーシップなる考え方が発表されました。
人前に出るのではなく、メンバーの後ろに居て、彼らを後からサポートしていくそんなリーダーシップです。
しかし、何故かこの言葉を聞く機会は少ないように思います。
そこで本書では江戸時代初期に起きた御家騒動を舞台にして、このサーバント・リーダーシップを具体的に紹介しようと思います。

江戸時代、御家騒動は数多くありますが、本書で取り上げた黒田騒動は伊達騒動、加賀騒動と共に三大騒動の一つです。
黒田騒動は福岡藩二代藩主黒田忠之の時代に、忠之の暴君ぶりに業を煮やした家老栗山大膳が、主君忠之を謀反の疑いで幕府に訴えたものです。
何故忠之が暴君となったのかを探ると、その原因が大膳だけではなく、父初代藩主黒田長政にあったと思うのです。
藩祖黒田官兵衛(如水)と長政のような、強いリーダーシップは戦国時代には適していました。
ですが戦が無くなり平和な時代になりつつあった日本では、メンバーを後からサポートして目標達成を実現させる、サーバント・リーダーシップが必要となったのです。
しかし長政は十分に息子忠之を教育したのか疑わしいし、家老大膳はただ忠之を抑えつけようとしていたのです。
大膳には忠之本人をと言うより、福岡藩が安泰であれば良い、と考えていたのではないでしょうか。
本書では大膳の行動に疑問を持ち、忠之の辛さに着目して、義父の大垣藩主松平忠良に活躍して貰うこととしました。

著者プロフィール
神戸 博(かんべ・ひろし)
1949年横浜市に生まれる。同志社大学工学部卒。
NEC日本電気入社、25年間に亘り無線通信システムの海外ビジネスに従事。その後日本エリクソン(現エリクソン・ジャパン)に転職、14年間勤務。在職中にコーチングを学び始め、(一財)生涯学習開発財団の認定コーチ資格を取得、社内コーチを始める。退職後の2009年、個人事業として「コーチHK」を起業。企業向けコーチング及び研修活動を実施中。一方、戦国及び江戸時代には若い頃より深い興味を持ち、多くの歴史小説を読破。2012年、名古屋市内に転居、執筆活動を始める。