江戸時代を小説の時代背景とする上で、浮世絵とその絵師を外すわけにはいきません。
 本シリーズの第七作で、葛飾北斎とその娘応為を主人公にしましたが、本書では日本浮世絵界の永遠の謎の人物とされる、東洲斎写楽を主人公の一人としました。
 「写楽が誰か」という謎については諸説ありますが、最も有望視されているのが徳島藩能役者である斎藤十郎兵衛です。
 そこでこの説に則り、もう一人の主人公である徳島藩前藩主蜂須賀重喜が、版元蔦屋重三郎と共同で写楽工房を作り、写楽絵を江戸で、更に阿波徳島で売り捌いたと想定してみました。
 物語は実在の絵師栄松斉長喜が読者に語っていきます。
 長喜が蜂須賀重喜や、写楽、蔦屋重三郎、更に喜多川歌麿他と語り合う中で、コーチングのフィードバックを駆使していくことで、物語が展開していきます。
 長喜は相手の話ぶりや顔付き、仕草などから自分にはどのように見えるか、聞こえるかを話し手に返していきます。
 話し手はフィードバックを受けることで、真の自身の気持ちや考えに気が付き、新たな生き方や道を発見します。
 長喜を始め登場人物は全て実在したとされていますが、彼らの絡み方や性格などは空想させて頂きました。
 また歌舞伎については作家内田千鶴子氏、能との関係については、永井俊哉氏の著書及び文献から多くを引用させて頂きました。
 この場を借りて、お断りと御礼を申し上げます。
【まえがきより】

第一章 写楽画登場
第二章 阿波徳島藩
第三章 浮世絵出版
第四章 活躍・消滅・復活

【著者プロフィール】
神戸 博(かんべ・ひろし)
1949年横浜市に生まれる。同志社大学工学部卒。
NEC日本電気入社、^25^年間に亘り無線通信システムの海外ビジネスに従事。その後日本エリクソン(現エリクソン・ジャパン)に転職、^14^年間勤務。在職中にコーチングを学び始め、(一財)生涯学習開発財団の認定コーチ資格を取得、社内コーチを始める。退職後の2009年、個人事業として「コーチHK」を起業。企業向けコーチング及び研修活動を実施中。一方、戦国及び江戸時代には若い頃より深い興味を持ち、多くの歴史小説を読破。2012年、名古屋市内に転居、執筆活動を始める。